【リキャップ】金融の障壁を打ち破る:Algorand India Summit 2025
- Akio Sashima

- 35 分前
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12月6〜7日、アルゴランド財団主催の「2025 Algorand India Summit」がベンガルールで開催され、380名以上の企業幹部、政策立案者、投資家、開発者、スタートアップ創業者、ソートリーダーが一堂に会しました。彼らは、インドを世界最大級のWeb3ハブへと押し上げるキープレイヤーたちです。
今年のサミット参加者は、ブロックチェーンの世界を体感しました。それはもはや未来の話ではなく、Web3ソリューションがすでに従来の金融や流動性の障壁を打ち破り、数百万人に経済的自立をもたらすスケールへと成長している世界です。
スピーカーとディスカッション
アルゴランド財団の主要メンバーが、インドにおけるWeb3導入の現状と未来について議論の口火を切りました。CEOのステイシー・ウォーデンは基調講演を行い、インサイトに富んだ「In Conversation(対話)」セッションをリードしました。

彼女は、Mann Deshi銀行・財団の創設者兼会長であるChetna Sinha氏と対談し、「Mann Deshi Digital Scorecard(デジタル・スコアカード)」を通じてインドのマイクロ起業家の金融アクセスを確保する取り組みについて語りました。また、Sow & Reapの創設者であるSuraj Teja氏とは、世界初の「農家ベースのオンチェーン・トークン化カーボンクレジット」の創出について議論を交わしました。
インパクト部門責任者のマット・ケラーは開会の辞を述べ、「ブロックチェーンとクリエイターエコノミー」に関する議論を主導しました。インド担当VPのアニル・カカニは、エコシステムのバックボーンである開発者の重要性を強調しました。さらに、インド技術責任者のDr. Nikhil Varmaは、企業リーダー向けに「顧客維持(リテンション)向上のためのWeb3の力」と題したワークショップを開催しました。
サミットのハイライト:エンタープライズ、政策、クリエイターエコノミー、スタートアップ
サミットでは、政策および様々なセクターにおけるブロックチェーンの実用的な適用について深掘りが行われました。
金融政策: 元公務員で教授のDr. KP Krishnan氏とのファイヤーサイド・チャットでは、インドにおけるブロックチェーン普及に必要な金融政策が探求されました。
エンタープライズ・スポットライト: 自営女性労働者協会(SEWA)のMirai Chatterjee氏は、5,000人以上の女性にブロックチェーン・ウォレットを提供し、政府の医療・福祉プログラムへのアクセスを支援する「デジタルヘルス・パスポート」について説明しました。Scalionチームは、Web2からWeb3への移行による「Farm-to-Table(農場から食卓へ)」の信頼構築と、それによる農家の資金調達支援について議論しました。
スタートアップ・エコシステム: 影響力のあるジャーナリストGovindraj Ethiraj氏がモデレーターを務め、在庫管理スタートアップInveraの共同創業者や、ブロックチェーン検証済み履歴書プラットフォームを構築するProofMintおよびEdubukの創業者らとの議論を進行しました。
映画と音楽: FilmFinanceの共同創業者Divya T.氏と独立系映画プロデューサーMadhureeta Anand氏により、クリエイティブ産業の課題と新しいモデルが提示されました。また、ミュージシャンがIPを管理し、透明なロイヤリティを得られるプラットフォームを構築するWebSonixのShreyas Kamble氏との議論も行われました。FilmFinanceとWebSoniXは、Algorand Startup Labの初期コホートメンバーです。
Web3インフラ: 過去のAlgoBharatピッチ大会の勝者たちが進捗を共有し、意義ある採用へのシフトを強調しました。Carret(2024年優勝)のShuja Hussain氏は企業導入のハードル除去について、LW3(2023年優勝)のAbhijit Pegu氏はEVバッテリーのリバース・ロジスティクス管理を通じた顧客維持ソリューションについて語りました。

ビジネスとパートナーシップ:注目のプロジェクト
イベントでは、Algorand上で実社会ソリューションを構築するチームからの一連の重要なアップデートが発表されました。金融から教育、気候、クリエイティブエコノミーに至るまで、インドのスタートアップと社会的コラボレーションは、オンチェーンでのエンタープライズ・インパクトの姿を示しています。
金融アクセスとフィンテック
Mann Deshi: インド初の女性マイクロ起業家向けブロックチェーン信用スコアカードを試験運用中。成功したパイロットでは500人の女性が登録し、最初のローン申請の半数以上が数週間ではなく1ヶ月以内に承認または実行されました。ケーススタディはこちら。
Carret: AlgoBharat 2024ピッチ大会の勝者で、インドのWeb3エコシステム拡大に必要なALGOへのアクセスと、暗号資産⇔インドルピー(INR)のオン/オフランプ(交換)のための金融レールを構築しています。共同創業者のShuja Hussain氏は、アルゴランド財団のポッドキャスト「Verifiably Random」に出演しました。
Scalion: Web2からWeb3への移行により、インドにFarm-to-Tableの透明性をもたらし、検証済み生産データを用いた農家の資金調達を支援しています。
サプライチェーンと物流の透明性
Invera: ブロックチェーンとAI主導の分析を用いて、小売業者の廃棄削減と補充自動化を支援するMVPをテストネットでローンチしました。初期パイロットでは、スマート在庫システムへの高い期待が示されています。
LW3: 大手EVメーカーとのパイロットを完了。フルWeb3スタックを使用し、ブロックチェーンによるバッテリー返却報酬とリバース・ロジスティクス支払いの自動化を実現しました。
IDと検証可能なクレデンシャル(資格証明)
Edubuk: インド初のブロックチェーン検証済み履歴書(CV)プラットフォームをローンチ。ProofMintと提携し、検証可能な資格証明を採用プロセスに直接導入することで、不正を減らし、人材配置を加速させます。
ProofMint: Algorandの「Intermezzo」ソリューションを使用し、即時資格検証のためのオープンAPIを備えたメインネットを稼働開始。現在、Edubukの雇用主向けソリューション「TruCV」の基盤となっています。
SEWA: 5,000人以上の女性にブロックチェーン・ウォレットを提供し、政府の医療・福祉プログラムへの迅速かつ低障壁なアクセスを支援。すでに80,000件以上のトランザクションがオンチェーンに記録されています。ケーススタディーはこちら。
Naandi Water: Algorandを活用し、安全な水に関する啓発イベントの追跡記録をオンチェーン化するソリューションを構築。ドナー管理やカーボンクレジット監査に必要なプログラム有効性の「改ざん不可能な証明」を提供します。

クリエイティブエコノミーとメディア
WebSoniX: 透明なロイヤリティとリアルタイムのアーティスト支払いのための音楽トークン化プラットフォームを構築。アーティストがIP所有権を失うことなく、新しいコンテンツを制作するための収益源を提供します。
FilmFinance: 誰でも映画に投資でき、独立系クリエイターが資金にアクセスできる新しい映画ファイナンスモデルでメインネット稼働中です。
クライメートテック(気候技術)
Sow & Reap: 「AWD(間断灌漑)」手法を用いた、世界初のオンチェーン・農家ベースのトークン化カーボンクレジットを生成。メタン排出を削減しながら、小規模農家に新たな収入源をもたらします。
AlgoBharat Hack Series #2 受賞者

サミットのハイライトの一つとして、AlgoBharat Hack Series #2の決勝戦が行われました。
Indrion (10xSwap): AI搭載のDeFiハブ。AIチャットエージェント、自動取引、マルチDEXアグリゲーションなどを統合し、複雑なDeFi活動を全ユーザーにアクセス可能にします。
AlgoXpress (Algo Intent): AI搭載レイヤー。英語のコマンドをオンチェーン・アクションに翻訳し、テキストを送るような感覚でトークン送信やスワップが可能になります。WhatsAppなどと統合。
Civitas (DeCoMan): 同意および文書管理のための分散型レイヤー。ユーザーに完全なデータ所有権を提供しつつ、組織には改ざん防止された同意記録を提供します。IntermezzoウォレットやDigilockerと統合。
ARCraft: Algorand向けの統合SDK。主要なARC規格の使用を簡素化し、最小限のコードでNFT作成やdApps構築を可能にします。
Algorand Startup Challenge 受賞者
12月7日にはStartup Challengeのファイナリストによるピッチが行われ、以下のトップ4プロジェクトが選出されました。
Xythum Labs: プライバシー保護型のダーク・エグゼキューション・レイヤー。機密性の高いインテントベース決済により、MEVやフロントランニング、注文フローの漏洩を排除します。
Alo Agritech (Kheti Badi): 検証済み有機食品サプライチェーン・プラットフォーム。L2技術を活用し、有機認証における信頼問題を解消するとともに、即時支払いを伴う市場への直接アクセスを可能にします。
Traxseon: 航空宇宙・防衛産業向けのブロックチェーン・サプライチェーン・プラットフォーム。ミッションクリティカルな電子機器の信頼性と真正性検証を変革します。
ScholarChain: 分散型学術出版プラットフォーム。研究知識のフラクショナル・オーナーシップ(断片化所有権)を実装し、研究者や査読者への公正な報酬と、コミュニティへの知識アクセスを両立させます。
未来への展望:Algorandが支える実社会インパクト
Algorand 2025 India Summitは、インドの重要セクターにおけるブロックチェーンの実用的かつ意義ある採用を浮き彫りにしました。金融包摂からスケーラブルな気候ソリューション、透明なクリエイター資金調達まで、Algorandは大規模な実社会インパクトの原動力となっています。
ご参加いただいた皆様、そしてMann Deshi、SEWA、Scalion、Carretといった、実用的で意義あるブロックチェーン採用を体現する素晴らしいチームに感謝いたします!









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