AIエージェントが溢れる未来には、これまでとは異なる決済システムが必要になる by マーク・バンレルベルゲ（アルゴランド財団CMO）

何百万、いや近い将来何十億というAIエージェントがオンラインに存在し、質問に答えたりコンテンツを生成したりするだけでなく、自律的に取引や交渉、共同作業を行う世界を思い浮かべてほしい。現在のアレクサやシリのようなデジタル・アシスタントだが、より賢く、独立していて、あなたの代わりに取引をしたり、サービスを購入したり、ヘルパーを雇ったりすることができる。タスクに特化したインテリジェントなソフトウェア・エンティティは、業界全体に組み込まれ、人や企業、他のエージェントのために、静かに意思決定を行い、契約を結び、価値を交換するようになるだろう。

しかし、一つ大きな問題がある。銀行を持たないのだ。

現在の決済インフラは、機械ではなく人間のために構築されている。決済に数日かかることもあるなど、時間がかかるうえに、取引手数料が高く、あらゆる段階で中間マージンが発生する。もし電子メールが郵便局に配達を頼っていたらと想像してみてほしい。機械にとって、今日の決済はそのように見える。

では、このAIエージェントがリアルタイムで動いているところを想像してみよう。AIエージェントはデータへのアクセスを購入し、計算能力を借り、他のエージェントを雇い、瞬時に判断を下す。銀行振込を3営業日待つようなことではうまくいかない。0.02ドルのマイクロトランザクションに0.30ドルの手数料を支払うのはナンセンスだ。エージェントは即時決済と超低コストを求め、それを必要としている。この新しい経済では、あらゆる遅延や手数料が摩擦となり、最終的にはシステムを壊すことになる。

この機械主導の新しいトレード形態は、「エージェント・コマース」とでも呼ぶべきもので、経済活動の大幅な加速につながるだろう。エージェントたちは眠らず、待たず、非効率を許さない。このようなエージェントが必要とするのは、常に稼働し、分散化され、高速で安価な決済レールである。これこそが、ブロックチェーン技術が投機資産のためではなく、プログラマブルで摩擦のないスケールの決済のために構築されたものなのだ。

では、これらのエージェントは何をするのだろうか？そのユースケースはすでに、価値交換、個人データ交渉、エージェント・コラボレーション・ネットワークという3つの大きなカテゴリーにまたがって出現している。

データはデジタル・ゴールドであるにもかかわらず、その作成者はそのデータAIモデルのトレーニングに使用されても補償されない。新しいタイプのウェブ・クローラーを想像してみてほしい。しかし今回は、コンテンツを無料でスクレイピングする代わりに、データ所有者（出版社、プラットフォーム、クリエイター）を代表する他のAIエージェントと交渉し、アクセス料を支払う。このような取引は機械対機械で、ミリ秒単位で行われる。

GDPRやCCPAのようなプライバシー規制により、個人は自分のデータをよりコントロールできるようになった。将来、消費者は自分のデータを管理し、収益化するためにAIエージェントを導入するだろう。これらのエージェントは、個人データの使用を自動的に拒否したり（ウェブサイトを訪問するたびに5回クリックする手間が省ける）、データを求める企業と条件を交渉し、報酬と引き換えにアクセスを許可したりする。繰り返しになるが、少額だが頻繁な支払いは、ブロックチェーン・レールで処理するのが最適だ。

エージェントは単独では行動しない。専門の旅行プランニング・エージェントは、複雑な旅程をコーディネートするかもしれない。それでも、タヒチのホテル予約代理店など、リアルタイムの空室状況データを持つ、深い知識を持つ他の代理店に相談する必要がある。このようなエージェントは互いに取引を行い、サービスやデータに対して迅速なコラボレーションの連鎖で支払いを行い、これまで数時間から数日かかっていたものを数秒で完了させる。

これが商取引の未来だ。自律的、協調的、瞬時。しかし、適切なインフラがなければ、どれも機能しない。AIエージェント間の何十億もの取引をサポートするには、銀行ではなく機械の言葉を話す新しい決済システムが必要だ。ブロックチェーンは単なる便利なものではなく、エージェントによる商取引を可能にする「欠けているパズルのピース」なのだ。

世界は加速している。決済システムはそれに追いつく必要がある。

元記事：https://www.americanbanker.com/opinion/a-future-full-of-ai-agents-will-require-a-different-payments-system